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またどこかで

ヘミングウェイの誕生日なので彼について + ヘミングウェイのオススメの小説

今日、7/21日はアメリカを代表するノーベル賞作家、アーネスト・ヘミングウェイの誕生日である。彼は1899年にアメリカに生まれ、歴史に残る中・長編作品を幾つか残した。

僕が始めてヘミングウェイを読んだのは高校二年生の時だった。僕は一度高校を退学になって、暫くしてから定時制の高校に通っていた。昼間にも開講されているところは一つしかなかったので、毎朝2時間電車に揺られて登校していた。この時間を使ってたくさんの小説を読んでいた。初めて読んだヘミングウェイの著作は「武器よさらば」で、村上春樹の小説に名前がでていたというなんともミーハーな理由で手に取った。

 

正直、僕はヘミングウェイの作品を手に取る日が来るとは思っていなかった。彼の男性的な作品が趣味に合わないと思い込んでいたからだ。故サリンジャーも「彼とは気が合わなかった」と言っているし(よくよく考えてみれば、繊細すぎるサリンジャーと気が合う人はごく少数しかいなかったのだが)、僕にも合わないだろうと早合点していたのだ。

しかし、実際読んでみると彼の作品はとても面白かった。武器よさらばに続けて、「老人と海」「誰が為に鐘はなる」を読んだ。どの作品も非常に魅力的で、苦痛を感じることなく読み進むことができた。

 

彼の作品に一貫していることは、常に敗北者が主人公になっていることだ。これは「ロストジェネレーション」と呼ばれている作家群の特徴なのだが、彼の場合は「グレートギャッツビー」の様に敗北し行き場の失った人間ではなく、敗北しながらももがこうとする人間の美しさを描こうとする。ヘミングウェイが持つ強さと弱さを同居した人間像が僕の目にはとても好意的に映ったのだ。

 

私生活でも彼は弱さと強さを併せ持った人間だった。行動派で強い肉体を持った作家であった彼は、その裏で非常に繊細な人間だった。躁鬱の気があり、突然攻撃的になることがあったため、彼とトラブルを起こしたという人も多い。

そして最期には晩年の交通事故で強い肉体を失い、そのショックからか本格的に躁鬱病を患ってしまう。精神病院にも入院し、最後にはショットガンで頭を撃ち抜いた。彼の作品に反して、彼は最後まで戦い抜かなかったといえるかもしれない。しかし、彼は波乱の人生を生き抜こうとした。その終着駅が自殺だったとしてもなんら非難されることではないと僕は思っている。

 

さて、以下ではヘミングウェイのオススメの小説をざっと紹介していく。彼の作品は誰にとっても読みやすいので、是非手に取ってほしい。

※あくまで紹介だから、詳しい考察などは一切なし。

 

日はまた昇る (新潮文庫)

日はまた昇る (新潮文庫)

 

第一次大戦後のアメリカで生きるロストジェネレーション世代の青年達を描いた作品。主人公は戦争によって性機能を失っている。若者たちはスペインで行われている祝祭に向かうが、情熱の地で感じるのは虚無感ばかりだ。それでも彼らは次なる享楽を求める。

登場人物たちの感じている虚無感とは、行き先を失ったロスジェネ世代のそれである。彼らに明日はあるが、それはただ時間が通り過ぎていくだけの明日である。そこには人生という名の闘争は一切ない。「日はまた昇る」という言葉はポジティブな意味ではない。また、同じような明日が来るだけという意味だ。

 

この小説、でてくる酒とか飯とかがとにかくおいしそうで、読んでいると酒棚に足を運ぶことになります。

 

武器よさらば (新潮文庫)

武器よさらば (新潮文庫)

 

大戦中に恋に堕ちた恋人の逃走期。必死に生き延びようともがく者と、人生の不条理さと残酷さ、それによって得ることになる虚無感を描き切った作品だと思う。

ヘミングウェイの凄いところは、こういう詩的になりやすいテーマをドライな文体で書き綴れることだ。彼の文体はどこか主人公を突き放すような感じさえする。

 

個人的に好きな作品の一つ。尚ネタバレが嫌な方は買ったらすぐに表紙を取ってくれ。背表紙は何があってもみてはいけない! 凄いネタバレが書いてあるからw

 

 

誰がために鐘は鳴る〈上〉 (新潮文庫)

誰がために鐘は鳴る〈上〉 (新潮文庫)

 

 

 

誰がために鐘は鳴る〈下〉 (新潮文庫)

誰がために鐘は鳴る〈下〉 (新潮文庫)

 

スペイン内戦が舞台となっている作品。鉄橋爆破任務を命じられた人民軍の主人公はゲリラ隊と合流する。そこで出会った女性と恋に堕ちるのだが……というのがあらすじ。

武器よさらばと同じく「戦争と恋愛」が物語の主軸として扱われているが、異なっているのは不条理の中でも戦い抜こうとする主人公の姿だろう。

 (ネタバレにならないように書くのが難しい小説だなぁ)

老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

 

 個人的にヘミングウェイ最高傑作といっていいと思う。「内容がある薄い本」と冗談を言われる程ほかの作品と比べてページ数は少ないけれど。

不漁が続いている老漁師は、久しぶりに自分の針に大物がかかるのを感じた。巨大なカジキと老人の闘いを描いた作品。

自然の厳しさ、老いて尚戦い続けること、敗北しても誇りを失わずに諦めず進んでいくいこと、若者へと受け継がれていく意思。老人への尊敬と若者への希望。色々な要素がこの一冊に詰まっている。

薄いということもあり非常に読みやすい本なので、是非手に取って読んでください!

 

 

↓どうでもいいコーナー

 

カエルの為に鐘は鳴る

カエルの為に鐘は鳴る

 

 

 このゲーム、小学生の時にやったけれど元ネタはヘミングウェイなんだよね……うん。戦闘がフルオートのアクションRPGといえばなんとなくどんなゲームかが分かるだろうよ。ただ、カルト的な人気があって……すいませんゲームの話題はサブカル置場でやりますね……

 

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