Black Life Non Sugar

またどこかで

Webでできる(エロくない)同人雑誌の作り方(雑誌『アレ』ができるまで)

 ご存知の方もいるとは思いますが、僕は<アレ★Club>という団体に所属し、『アレ』という名前の同人誌の編集長をやっています。様々な方に手に取っていただき、それなりに評価もしていただいており、大変嬉しい限りです。

 さて、僕たちは『アレ』をWeb上で作っています。メンバーが東京と大阪で分かれており、一人を除いたメンバーが社会人なので、実際にメンバー全員が顔を合わせるのは東京で開催される文学フリマの時だけ、つまり年2回しか会いません。

 他の批評・小説等を扱うサークルさんは、(SNSを見る限りでは)少なくとも最終編集作業や会議を顔を合わせて行っているように見受けられますが、<アレ★Club>ではそれらの作業を全部ネット上で行っています。

 僕たちの雑誌を近くの書店で立ち読みしていただければわかると思いますが(委託情報は最後に載せます)、Web上で作っても、雑誌のクオリティは落ちたりしません。個人的には、他の同人誌よりも質のいいものを発行している自信があります。実際、『アレ』をプロの編集者に見せたところ「商業誌と変わらない」という言葉もいただいています。

 仲間と同人誌を作りたいと思っていても、様々な制約(時間、場所、etc…)でなかなか踏み出せないという方や、単純に<アレ★Club>がどのように同人誌を作っているか知りたい方のために、簡単にですがWebでの同人誌の作り方を書いておきます。

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↑最新号の表紙と目次

1.メンバー集め(ネット上で知り合い、いかに組織を作るか)

 <アレ★Club>のメンバーは全員Twitterで知り合いました。まず、代表(大阪在住)と僕(編集長・東京在住)は約10年前からのフォロワーで、ネットでいちゃいちゃしつつオフ会等でも会っていました。

 去年の4月、山下から「ネットで知り合った何人かと批評っぽい同人誌を作りたい」という話を僕にしてきました。一度は断ったのですが、度重なる説得に折れ、団体発足から2か月経った6月に参加しました。

 他の創立メンバーも、全員が山下のフォロワーで、何人かは僕と共通のフォロワーでもありました。僕が参加してから(僕が会社でWebサイトの編集長だったこともあり)「俺が雑誌の編集長やって、山下が団体の代表をやって、大阪と東京に拠点を持とう」ということになり、<アレ★Club>は結成されました。

 正直、Web編集者が紙媒体の編集もできるわけがないので、不安でしかなかったけれど、そこは勢いでどうにかなるだろうと思っていました。

 他のサークルだと、代表1人に他数名、多くて代表と副代表の2人という組織形態をとるところが多いですが、<アレ★Club>ではコアメンバー4人とかいう、他のサークルからしたら意味のわからない人数の幹部を置いています。これは僕と事務方(+代表)で決めました。

 僕と代表では事務方が不安だったので、メンバーの中で同人経験が豊富で、私生活でも事務仕事をやることがあったメンバーに事務局長を任せました。また、組織の調整役および、将来Web関連で色々やりたいということもあり、プログラマーのメンバーも幹部に(彼は意見の調整役としても機能しています)。残りのメンバーはいわゆる兵隊、つまり指示を受けて何でもやる方々です。

 組織作りの面では、情報共有さえできていれば、専門ごとに役職を決めた方がいいと思っています。そうすることで各役職が考えることが少なくなりますし、より専門的になりますし、時間的な余裕もできる。これによって私生活と趣味の雑誌作りを両立させつつ、本のクオリティを上げることができます。

 こういう組織作りの際に一番重要なのは情報の共有なのですが、それについては後で書きます。

 僕が編集長で、事務方にもう1人、プログラマー1人……「あれ?代表の仕事は?」と思う方もいるでしょう。彼の仕事ですが……土下座です。僕が好き勝手動いて、事務方がうまく立ち回って、代表が土下座外交するというのが、<アレ★Club>の組織形態です。

 各役職の仕事を簡単にまとめると

代表…サークルの顔。イベント等で話す。全ての責任を負う。書記。土下座。

編集長(僕)…雑誌のテーマや方向性の決定。執筆希望者の合否等の最終判断。各原稿の最終チェック。マーケティング戦略等の決定。 イベント等で話す。他のメンバーへの指示。代表へ指示。他

事務方…事務仕事。渉外。詳しくは書けません。他のメンバーへの指示。代表へ指示。他

プログラマー…実質何でも屋。意見の調整。原稿のチェック等を僕の前にやるのは大体彼。組織のためにプログラミングしてくれますが詳細は書けません。

他のメンバー…人数は伏せますが幹部より人数は多いです。編集長と事務方の指示を受けて行動します。

 

 ざっくりだけどこんな感じ。事務方に怒られそうなことについては伏せたり書かなかったりしています。営業は僕と事務方中心に、他のメンバーもやります。

  組織で一番重要なのは事務方と営業マンなので、できるだけ優秀な人をその地位に置いてください。

  もう一つ、一番大切なのはお金の管理です。ここが最もトラブルの起こりやすい部分ではないでしょうか? そのため、下手な人間を事務方に置くと大変なことになります。基本的に、お金の管理はサークルを立ち上げた本人がやるべきでしょう。

 もし自分の事務能力に自信が無く、他の人にお金の管理を任せたいと思っても、サークルの口座だけは自分で持っていた方がいいです。実際、<アレ★Club>も口座は代表の所有です。

 <アレ★Club>では幹部はこれ以上増えませんが、指示を受けて動くメンバーは現在も増えています。

 新規メンバーを誘うにあたって重要なのは、信頼できて、団体内で役割をしっかり持てる人以外は参加させないことが大事です。当然かもしれませんが、ネットで誘う以上、顔を合わせて面談はできないので、かなり慎重にならざるを得ません。代表が「この人に声をかけたい」と言った人でも、僕が反対して声をかけなかったりしています。できれば、トライアルみたいな形でちょっと作業を手伝ってもらって、様子を見てから正式に参加してもらうという形の方がいいと思います。

 ネットで同人誌を作るとなると、どうしても「オフ会の延長線上にある雑誌作り」になりがちです。そうしたくないのなら、自分1人で血反吐を吐きながら頑張るか、しっかりとした組織を作り、組織全員で血反吐を吐くかのどちらかをした方がいいです。いずれにせよ血反吐は必ず吐きますが、「いい組織>1人>悪い組織」の順に、血反吐の量は減ると思っています。

2.Webで雑誌を作る 

 さて、実際にWebで雑誌を作るとなると、先ほど書いたように情報の共有が重要になってきます。<アレ★Club>では「Slack」を使って情報共有をしています。

slack.com

 知りたいことがあったらググってください。

 

 また、<アレ★Club>では毎晩「Google Hangout」を立ち上げています。これは毎日会議をやっているわけではなく、半分雑談・半分会議の緩いものです。参加は強制ではありませんが、ここで良い案が出たり、組織の方向性が決まったりします。

  正式な会議は不定期で、大体僕か事務方が企画・連絡して行います。ここで話し合い+毎晩のハングアウトや、Slackのチャットで出た色々をまとめたりします。

 さらに、各原稿の編集や校正も、ハングアウトを繋げながら行います。全ての記事は「Google Drive」で管理し、主に「Google Document」上で作業をします。どれもGoogleのサービスばかりですね。僕たちはGoogleに頼って雑誌を作ってます。

  しかし、Webで雑誌を作るとはいえ、ネットでの関係の延長線上でやってもロクなものは作れません。リアルの人間関係よりも信頼できるメンバーでなければ、会議も気を遣ってしまいます。重要なのはどのツールを使うかではなく、皆が同じ目標を目指し、連帯できるような組織作りです。その為にも、毎日ハングアウトを繋げ、Slackでやり取りをしています。毎日話していれば、自然と距離が縮まり、深い話ができるようになっていきます。

 あと、皆をまとめるという意味では、代表はサークル立ち上げから頑張ってくれたと思っています(悪意の薄い字)。

 さて、細かい雑誌の作り方に移ります。僕たちが作っている『アレ』では、インタビューと通常の記事を扱っていますが、どちらも雑誌の方向性やテーマに沿って進めていく必要があります。『アレ』全体の方向性や、各号個別のテーマ等は、編集長である僕が9割方決めています。僕が投げたものを皆で話し合って正式に採用し、それをもとに雑誌を作っています。

  原稿についてですが、まず執筆希望者の方とヒアリングを行います。これは「Skype」やメール等を使っています。そこでテーマを会議して、OKだったら原稿を書いてもらいます。また、その際に幹部のうち最低1名が担当編集者としてその人につきます。誰を担当するかはその人のテーマ等で決めています。

  原稿が行き詰った執筆者さんには、その旨を連絡していただき、日程を調整し、話し合いを行います。この話し合いは文章でやると、しっかり伝わるかわからないので、肉声を用いるツールのみで行います。また、執筆者さんから上がった原稿はDocument上でコメントを付けていき、執筆者さんに戻します。場合によっては、ここでも話し合いを行います。

  インタビューに関しては、仕事でインタビューする時と流れは変わりません。アポをとって、インタビューして、テープ起こし、記事を書いて……以下略。勿論、インタビューに慣れていないメンバーが著名な方の所へ伺うこともありますが、そういう時は事前準備をしっかりしてから行かせます。「同人誌でインタビュー」と言うと敷居が高そうに聞こえますが、そんなことはありません

  ざっくりですが、こんな感じです。ここで重要なのは、個別の執筆者さんとのやり取りを丁寧に行い、各担当者に報連相を徹底させることです。結局は信用と情報、常にこれが大切です。

 3.委託やイベント

 こうして作った雑誌は、即売会で頒布したり、あるいは書店さんに委託をします。これに関しては特に言うことはありません。ググれば出てきますから。

 <アレ★Club>の場合は、いつでも事務方や編集長がお客様や著名人の方の来場に対応できるように準備しています。雑誌の性質上、著名な方に購入していただくこともあるので、イベント前後は緊張しています。

  あと、代表はいついかなる時でも、土下座する準備をしています。彼のツイッターアイコンも土下座写真にしたいですね!

 

4.まとめ&よくある質問への回答

 以上が、Webでの同人雑誌の作り方です。まぁ、簡単なことしか書いていません。ツールが発展し、ネット上で人を集めて雑誌を作るのは楽になりました。

  一方で、複数人で雑誌を制作するとなった時に、信頼関係の構築はなかなか難しいです。これに関しては、なるべく多くのやり取りをし、「報・連・相」を徹底するくらいしかありません。

 普段の何気ない会話から会議のやり取りの繰り返しと、情報伝達の徹底。これがいい同人サークルを作るコツだと思っています。

 以下、よく聞かれる質問の回答を簡単にします。また、質問がある方は僕のツイッター@kuraharu)まで下さい。リプライ以外の質問は多分見逃します(勿論、全てのリプに応えられるとは限りません)。

 

①雑誌のテーマについて

 個別の号については雑誌に書いてありますが、『アレ』という雑誌に関しては一貫して、

「日頃見逃してしまいがちな『アレ』にスポットライトを当てる」

というテーマのもと作っています。

 また、批評誌を難しいと思っている人にも読みやすく、批評界隈にも読み応えのある内容を提供したいと思っています。

②大阪発の雑誌ですか?

 「Web発」です。大阪の代表と東京(静岡出身)の編集長が中心となり、Webで作って様々な場所で販売しています。他のメンバーや執筆者さんの出身や所在地も様々です。

 様々な方から「大阪で頑張れ!」と応援していただけていますが、僕たちは場所に縛られない団体です。勿論、大阪や地方で批評やカルチャー誌の文化がほとんど無いことは問題だとは思っていますが、かといって東京のサークルの対立軸として捉えられても困ります。

 もう一度言いますが、うちは「Web発」です。

 ③他のサークルを意識していますか?

 これもよく聞かれますが、「ブルーオーシャンを泳ぐ」が僕のライフスタイルなので、そもそも他を意識する必要がない雑誌を作っているつもりです。まぁ、他のメンバーのことは知りませんが、「〇〇っていうサークルが」って話に上がった時は、「気にする必要ないから」と説教しています。

 でも、『アレ』を読んで『ユリイカ』さんや『エクリヲ』さんにも興味が出た・読者になったという方がいらっしゃれば嬉しいですね。批評の入り口的な機能も、『アレ』には持ってほしいので。

 あと、商業誌が何をやっているかはチェックしています。彼らは需要をしっかり吸い上げるので。

 ④代表の存在意義は?

 勘違いしてほしくないですが、うちのサークルは代表と事務方だけいれば回ります。一番不要なのは僕と兵隊ですよ。組織に必要なのは事務方と頭を下げるやつです。そこに調整役が入れば充分です。僕は皆の代わりに色々考えたり、動いたりしているだけですからね。

 この記事でも弄っていますが、代表はたくさん弄って欲しいとのことなので……(SMである)

 ⑤商業化について

 まだ駆け出しのサークルですからねぇ。時が来たらって感じです。

  以上です。なお、質問は受け付けますが「そんなの自分で考えろ」と僕が思ったら返しません。偉そうに見えるかもしれないけど、「何かを作りたかったら自分で考えろ。自分で行動して、それから質問しろ」という僕の以前の上司の言葉に従って……実際、これはすごく大事なので。

 

 30分で書いたから文章的にアレだけど、きっとうちのメンバーが修正をワードか何かで送ってくれるはずです。待ってます。タブンネ

以上!

委託情報はここ!

ch.nicovideo.jp

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フリーライター 堀江くらは 

kuraha0023☆gmail.com

詳しいプロフィールはこちら 

堀江くらは(@kuraharu)のプロフィール - ツイフィール

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