Black Life Non Sugar

またどこかで

探していた本を見つけた時の感動~就活の帰りに電車の中で泣きながら本を読んだ話~

今日、久しぶりに近所の古本屋に行った。小さな古本屋だが海外文学のコーナーがちゃんとある、僕好みの店だ。

 

まだここで本を買ったことは一度もなかった。というか、ここ最近本を買っていない。本屋においてある海外文学の名著は大体持っているためだ。

興味があり、かつ持っていないのはピンチョンの作品のような長くて高いもの・絶版になっているものくらいだろう(積み本は多いぜ)。

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)

トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[上] (Thomas Pynchon Complete Collection)

 

 ※失われた時を求めてとか全巻一度に買える人は凄いよ。さらにそれを一気に読むとまでなれば神の域。

 

なので大した期待もせず、なんとなーく本棚を眺めていた。本は見ているだけで落ち着く。古本屋は素晴らしい。ここで本に囲まれ、コーヒーを飲みながら死ねたらどんなに素敵だろうかとよく思う。

 

ふと一冊の本が目に入る。

 ウンベルトエーコ バラの名前

ずっと探していた本である。たしかにamazonで買うこともできるが、それだとちょっと高いし味気ないと思っていて手を出さなかった一冊だ。

しかも100円特価のワゴンの中に放り投げられているではないか!

薔薇の名前〈上〉

薔薇の名前〈上〉

 

 さらに隣には同作者のフーコーの振り子が置いてある。これも100円。買いだ…

フーコーの振り子〈上〉 (文春文庫)

フーコーの振り子〈上〉 (文春文庫)

 

 しかしここであることに気が付く。

両作品とも上下二巻の内、上巻しか置いてないのだ。

迷わず店員のおじいちゃんに「下巻ないの?」と聞く。

「下巻がないから100円なんだよ。別の客が下巻だけ買ったんじゃないかな」といじいちゃんは煙草を吸いながら言う。

しかたなく上巻だけ買ったが、十分満足できる買い物だった。

多分、誰かが上巻だけ買ったせいで下巻だけ足りない人がいたのだろう。そして僕が次に下巻だけ買うから、また下巻難民を生んでしまうんだなぁ。

なんてことを考えながら帰路に就く。

いいじゃないか。それも古本の楽しみだ。下巻を神保町とかで探しまわるのも悪くない。

 

探していた古本との邂逅はいつだって感動的だ。僕が始めてそうした感情を抱いたのは僕がまだ大学生の時だった。

当時の僕は就活生で、冬になっても内定がもらえていない「お先真っ暗」な状態だった。

にも関わらず僕は面接をサボって神保町を散歩した。もうどうでもよくなっていたのだ。絶望からくる無気力な行動力はすさまじいものがある。僕は神保町とその周辺にある全ての古本屋を回った。

ある店で3年間探し回って見つけられなかったマルケス百年の孤独(当時は本屋にもなく、amazonも売り切れ状態)と出会うことができた。

しかもこれも100円。運命的な出会いだった。すぐさま購入して帰路につく。就活の交通費がかさみすぎていて新幹線なんて使えないからもちろん鈍行だ。

電車の硬いシートの上で3時間超、ひたすら百年の孤独に没頭した。

その圧倒的な言葉の力、奇想天外な展開。文学が持つエネルギーを前にして、僕は思わず涙していた。ボックス席の上で、声を殺して人目につかないようにがち泣きした。

「なんて自分はダメなやつなんだ。就活サボって本を買って…でもこの本と出合えてなんて幸せなんだ!」

という喜びと絶望が混ざった感情は、この先二度と感じたことがなかった。

 

今回のエーコとの出会いはこの時の感動に比べたら小さいものかもしれない。でも、いつだって良書との出会いは嬉しいものだ。

それでも、下巻を探している間バラの名前を読むことはないだろう。こうして積本が増えていく…なんてことは考えたくない。

 

百年の孤独 (新潮・現代世界の文学)

百年の孤独 (新潮・現代世界の文学)

 

 ↑僕が買った方

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

 

 ↑新しい方。

 

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