Black Life Non Sugar

またどこかで

ガルシア・マルケスのオススメ小説をまとめてみた。

 先日コロンビア出身でノーベル賞作家でもあるG・マルケスが亡くなった。以前から認知症を患っており、体調も思わしくなかったとはいえ突然の悲報に驚いた読者は多いだろう。もちろん僕もその1人だ。マルケスとの出会ってからまだ一年も経っていないのにとても残念だった。

 マルケスの名前は以前から僕の大好きなF・カフカの影響を受けた作家ということで聞いていたが、その著作は中々見つからず、また見つかっても結構な値段がするので学生だった僕には手に取ることができなかった。しかし、ある日就活をさぼってよった神保町の古本屋にボロボロの「百年の孤独」が100円で売っていたのを見つけ迷うことなく購入した。今思えば奇跡的な出会いだったと思う。帰りの電車でページをめくったが、その壮大なマジックリアリズムの世界観に圧倒されてしまった。就活がうまく行かずボロボロだった僕は「自分は何をしているんだろう」という思いに突然かられ車内のトイレで泣いてしまった。それくらいマルケスの小説は僕の心に強く残った。その後も「エレンディラ」や「コレラの時代の愛」などを読み漁った。どれも刺激的な小説だった。

 だが、そんなマルケスは死んだ。新作の出せなくなった死んだ作家の運命は2つに1つだ。1つは偉大な作家として後世にまで読まれ継がれる道、もう1つは誰からも忘れ去られてしまい歴史に埋もれてしまう道。ドストエフスキーなどは明らかに前者だが、カフカは後者が友人のお陰で前者になった特殊な作家もいるくらいだから、中には大作を残しながらも後者の道を歩んだ作家もいるだろう。ではマルケスはどうだろう? 確かに彼はノーベル賞をとっている。しかし、日本での知名度はあまりない。「文学マニア」くらいにしか知られていない作家といってもいいかもしれない。もし文学マニア達が彼を読まなくなったら、彼は永遠に歴史の闇に葬られてしまうだろう。だからこそ一般の人にも、普段は村上春樹宮部みゆきしか読まず、たまにシェイクスピアに手を伸ばすような人にもマルケスを読んでほしいと僕は思う。そこで今回はマルケスの小説をいくつか紹介したいと思う。

 ※前置きが長くなってしまうが、システム上アマゾンのリンクは必然的にアフィになる。しかし貴方がもしマルケスが気になったのならこのブログから購入する必要はない。近くのブックオフに安く売っていたらそっちを買ってくれて構わない。僕は1人でも多くに彼の本を読んでほしい読者の1人に過ぎない。

 

 

百年の孤独 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1967))

百年の孤独 (Obra de Garc〓a M〓rquez (1967))

 

 「百年の孤独

マルケスを語る上で外すことのできない最も重要な作品である。架空の村を繁栄させたある一族が、村と共に衰退していくまでを描いた作品だ。流れては消えていく奇想天外で神話的な出来事と細部に見られる現実の風景がごちゃ混ぜになってテンポよく流れていくその様はエンターテイメントとしての小説の面白さが凝縮されているといってもいいだろう。一族の世代はどんどんと移り変わる。強烈な印象を残した人物は死に、蜃気楼のように忘れられていく。そして最後には村も一族そのものまでも……

 とにかく読んでみたら物語の厚みに圧倒されることだろう。それでいてテンポよく読むことが出きるので長いのに苦にもならない偉大な小説である。

 

 

コレラの時代の愛

コレラの時代の愛

 

 「コレラの時代の愛」

 コレラの時代に51年と9ヶ月と4日もの間1人の女と結婚するために待っていた男の物語。百年の孤独に比べ空想的な部分は減るが、これだけ長い期間1人の女(しかも既婚)との結婚を望む男性の物語という設定は充分奇想天外だ。

 この小説の凄いところはマルケスが51年の間に起こる戦争やコレラの流行といった歴史的な出来事を徹底的に調査している点だ。全ては現実に起こったことを背景にしており、手紙が電話に移り変わるタイミングまでも現実と符合する。こうしたマルケスの努力によってこの小説は空想を現実のなかにすっぽり納めてしまう。男の非現実的なラブストーリーが本当にあった話のように錯覚してしまう。そういう点でこの作品はマジックリアリズムの名作といえるのではないだろうか。

 また、結婚や老いといった人生において誰もが通過する事件に対する洞察も深い作品でもある。

 

 

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)

 

 「エレンディラ」

 ちくま文庫からでているため手に取りやすい作品であろう短編集。マジックリアリズムのよさがつまった作品ばかりが収録されている。

 特に表題作は傑作。醜悪な祖母によって身体を売る羽目になった悲劇の少女の物語だ。死と性を残酷に描きながらも強く生き、最後には祖母から逃げ出す少女の姿には心が打たれる。

 他にも蟹によって侵食されていく島や年老いた天使など残酷ながらも幻想的な小説が多数収録されている。どの短篇も砂漠が生を、海が死を連想させる。

 

 

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

 

 「予告された殺人の記録」

 街で婚礼の祝いが盛大に行われる中、充分な犯行予告があったのにも関わらずなぜ殺人事件は起きてしまったのかを過去に遡り解明しようとするドキュメンタリー的な小説。閉鎖的な田舎町を舞台にしており だからこの止められなかった殺人。閉鎖的な空間で渦巻く憎悪と愛にまみれた人間関係を描いている。断片的且同じことが視点を変えて繰り替えされる小説だが、だからこそ残酷な事件についての印象は読み進めるほどに強く、また明晰化していく。

マルケスの小説としては珍しい形ではあるが、だからこそ彼が技巧派の作家だということが分かる作品だ。

 新潮文庫からでているということもあり、そこら辺のブックオフに100円で投げ売りされているので手に入りやすい。が、個人的には「百年の孤独」からマルケスに入門して欲しい。時間やお金がないならばこの本から入っても充分だが。

 

時間の関係上今回はここまでにしておくが以下に他のオススメ小説を載せておくので気になったものがあるならば是非手に取って欲しい。

 

 

族長の秋 ラテンアメリカの文学 (集英社文庫 カ)

族長の秋 ラテンアメリカの文学 (集英社文庫 カ)

 

 

 

わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004))

わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004))

 

 

 

迷宮の将軍

迷宮の将軍

 

 

 

 

 偉大な作家、マルケスのご冥福をお祈り致します。僕はあなたの小説に出会えて本当によかった。

 

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